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導入企業・システム概要
◆導入前の課題
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膨大な紙帳票の管理限界と見えない『現場のロス』がありました。
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- 紙管理によるトレーサビリティーの脆弱性と検索の非効率
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自動車業界特有の厳しい品質管理基準により、製造チェックシートや検査記録の保管期間が長く、保管庫が紙の資料で溢れかえっていた。
万が一、納入先から不具合の問い合わせがあった際、該当ロットの紙資料を探し出すのに数時間を要しており、原因究明と顧客への報告(初動対応)が遅れることが経営課題となっていた。
- 停止理由の曖昧さと「チョコ停」の常態化
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設備の稼働率は把握していたものの、日報には「機械停止」としか記載されず、「なぜ止まったのか(センサー検知、材料詰まり、調整など)」という具体的な理由がデータとして残っていなかった。
そのため、数分程度の短い停止(チョコ停)が頻発していても対策が打てず、生産効率が上がらない原因が特定できていなかった。
- 作業スキルの属人化と技術継承の難しさ
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ベテラン作業者と若手作業者で、同じ製品を作る際の「段取り替え時間」や「サイクルタイム」に大きなバラつきがあった。
しかし、具体的な作業時間のデータがないため、「何に時間がかかっているのか」を客観的に指摘できず、指導が「ベテランの勘と経験」頼みになり、若手の育成が進んでいなかった。
- 集計作業のタイムラグ
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現場で記入された手書き日報を、翌日以降に事務員がExcelに入力・集計していたため、製造実績や不良率の数値が確定するのが数日後になってしまい、不良発生時の対策が後手に回っていた。
◆対策
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上記課題を解決するため、それぞれ以下のような対策をシステムとして実装しました。
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- 情報の信頼性・検索性の向上(トレーサビリティー強化)
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- 製造チェックシートの完全ペーパーレス化
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従来、紙で管理していた工程内検査表や設備点検表を全てタブレット入力に切り替えました。製品ごとの規格値(公差)をマスタ登録し、入力値が規格外であればエラー表示させることで、不適合品の次工程流出や記入ミスを未然に防ぐ仕組みを構築しました。
- 瞬時のデータ検索システムの構築
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製品ロット番号、製造日時、担当者、使用設備の紐づけを自動化しました。これにより、トレーサビリティー調査が必要になった際、タブレットや管理PCからキーワード検索するだけで、数秒で該当データと当時の製造条件を呼び出せるようにしました。
- 情報の即時性による「現場の見える化」
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- 工場レイアウト図によるリアルタイム監視
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工場内の大型モニターおよび管理者のPC画面のそれぞれに、実際の工場レイアウトを模した配置図を表示させました。
稼働状況を色分け(稼働=青、停止=赤など)することで、広い工場内のどのエリアのどの機械が「止まっている」かを、現場と事務所の双方からリアルタイムに把握できるようにしました。
これにより、現場作業者と管理者が同じ危機感を共有し、停止に対して即座に連携・対応できる環境を構築しました。
- データ分析による生産性向上と人材育成
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- 停止理由の詳細記録と「チョコ停」の顕在化
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機器が停止すると、作業者がその場でタブレット上の選択肢(「センサー異常」「チップ交換」「ワーク詰まり」等)から理由をタップして記録する運用を徹底しました。
これにより、従来の手書き日報では「稼働中」として埋もれてしまっていた数分単位の停止(チョコ停)や、具体的な停止要因をデータとして蓄積・グラフ化し、改善ポイントを明確にしました。
- 作業者別データの収集と標準化
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作業者ごとの「段取り時間」や「サイクルタイム」を自動集計し、ベテラン(熟練工)と若手のデータを比較・分析できるようにしました。熟練工の無駄のない動きを数値化し、それを基準(スタンダード)として若手の指導を行うことで、工場全体のスキル底上げを図りました。
◆ご担当者様のコメント
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「『勘と経験』の管理から脱却し、データに基づく改善サイクルが定着しました」
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「導入前は、何かトラブルがあると紙の山から記録を探すのに半日かかり、原因追及も現場の『記憶』頼みでした。
システム導入後は、タブレット検索で瞬時にトレーサビリティーが確保でき、お客様への対応スピードが格段に上がりました。
また、工場のレイアウト図で『今、どこが止まっているか』が一目瞭然になった効果は大きいです。現場と事務所の双方でモニターを見て、『あそこの機械が停止している、応援にすぐ行こう』と連携が取れるようになりました。
埋もれていた『チョコ停』の原因もデータとして可視化され、熟練工のノウハウも数値化できたことで、若手への指導や設備改善に具体的かつスピード感を持って取り組めるようになりました。」